個人と法人の違い⑪ 税率(国税編)

所得税と法人税の大きな違いとして、その税率が挙げられます。個人事業主が法人成りを検討する際には避けて通れない部分なので、個人と法人の違い 第11回では個人と法人の国税である所得税・法人税それぞれの税率を確認していきます。

所得税率と法人税率の特徴

税率を見ていく前に、所得税率と法人税率の性質の違いについて簡単に触れます。所得税は「超過累進税率」という、所得金額に応じて段階的に税率が上がっていく仕組みになっています。所得が大きければ大きいほど税率が上がり、最高税率は45%にもなります。

一方、法人税も中小企業においては所得による税率の違いがありますが、基本的には一律の税率が設定されていると言えます。税率は最高でも23.20%と、所得税と比較すると低い税率に抑えられています。

所得税と法人税のどちらが税負担が少なく済むかを考えるうえで、税率に関する性質の違いはとても重要です。個人事業主は安定して大きな所得が出ると見込まれるタイミングで法人成りを検討するのが一般的です。

所得税率と法人税率の違い

所得税率

具体的に所得税率と法人税率を見ていきましょう。所得税の税率は以下の通りとなっています。

課税所得金額所得税率控除額
1,000円~1,949,000円5%0円
1,950,000円~3,299,000円10%97,500円
3,300,000円~6,949,000円20%427,500円
6,950,000円~8,999,000円23%636,000円
9,000,000円~17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円~39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

表を見ていただければ分かる通り、所得税は段階的に税率が上がっていきます。

なお、たまに勘違いしている方がいますが、所得税率は一定の所得になった時点でいきなり跳ね上がるわけではなく、あくまで段階的に上がっていきます。

例えば所得金額が300万円の人は300万円に対して10%の税率が適用されるわけではありません。正しくは「195万円までは5%」「195万円を超えた分に10%」の税率が適用されます。それを速算するために使用するのが上記表の「控除額」です。以下の通り、どちらの方法で計算してもその税額は一致します。

  1. 195万円×5%+(300万円-195万円)×10%=202,500円
  2. 300万円×10%-97,500円=202,500円

意外と勘違いしやすいポイントなので覚えておきましょう。

また、平成25年からは「復興特別所得税」が所得税額の2.1%分課税されています。

法人税率

続いて法人税率です。平成30年4月1日以後の法人税率は以下の表の通りです。なお、以下の表は資本金1億円以下の普通法人に適用される税率です。資本金1億円超の法人の税率は一律23.20%となっています。 

所得金額法人税率
800万円以下下記以外15%
適用除外事業者19%
800万円超23.20%

上記表のうち「適用除外事業者」とは、過去3年間の所得平均額が15億円を超える法人を指します。

法人税の税率は、所得税と比べると分かりやすい体系になっています。一般的な中小企業では「所得800万円以下は15%」「所得800万円を超えた部分には23.20%」の税率が課される、押さえる点はここだけです。

また、上記に加えて「地方法人税」が法人税額の10.3%分課税されます。

法人成り検討のポイントとは?

所得税率と法人税率、それぞれの違いを見てきました。法人成りを検討している個人事業主の方は「所得がいくらになったら法人成りすべきなのか」という点が気になるポイントでしょう。

法人成りのベストなタイミングは、結論から言うと「ケースバイケース」という答えになってしまいます。従来は「法人設立後2年間は消費税が免税」という分かりやすいメリットがあったため、事業収入が1,000万円を超えたら法人成りを検討するのが一般的でした。しかし2023年10月1日から始まるインボイス制度によって、そのメリットも享受できなくなる可能性があります。

所得税率と法人税率だけを見ればある程度の答えは出せますが、法人成りにはそれ以外にも気にしなければならない点が数多くあります。

特に社会保険料の負担は馬鹿にならないため、法人成りを検討する際は必ず考慮する必要があります。また、「扶養家族が多い」「住宅ローン控除が利用できる」といった方は所得税の負担が抑えられるため、大きな利益が出ていても個人事業主の方が税負担(社会保険料負担も含む)が少なく済むケースもあります。

さらに、法人成りには金銭面以外にも「稼いだお金を自由にプライベートに使えなくなる」「税務調査リスクが増加する」といった一面がある点も無視できません。

法人成りのデメリットばかりを書きましたが、もちろん法人成りにも以下のようなメリットがあります。

  • 役員報酬を経費にできる
  • 信用力が高まる(金融機関、取引先、採用面)
  • 赤字決算の際の繰越欠損金を10年間繰越し可能

税負担面で極端な有利不利が生じないようであれば、税負担面以外のメリット・デメリットを考慮して法人成りを検討した方が後々後悔しないで済むかもしれません。

まとめ

所得税率と法人税率の違いと、それに付随する「法人成りのタイミング」について解説しました。所得税率は超過累進税率が採用されており、所得が増えれば増えるほど法人成りが有効な節税手段となります。

しかし、法人成りには所得税・法人税以外にも様々な要素が絡んでくるため、一概に「所得いくらになったら法人成りがお得」と断言することはできません。本格的に法人成りを検討している方は、金銭面以外のポイントも含めて検討することをおすすめします。