融資で見られるポイント④ 損益計算書編
損益計算書は一定期間における経営成績を表す書類です。売上や利益といった経営者にとって関心が強い項目が記載される書類であり、融資の際にも当然重視されます。
融資で見られるポイントの第4回では「損益計算書」の具体的なチェックポイントを解説していきます。
損益計算書4つのチェックポイント
損益計算書で重視すべきポイントとして以下の4項目が挙げられます。
- 売上高
- 各利益
- 簡易キャッシュフロー
- 無理やり利益を出すことの効果
それぞれ順に解説していきます。
売上高
金融機関は成長著しい会社には積極的に融資を行います。過去3期の売上が増収で推移していれば文句なしに好印象です。
減収傾向にある場合は増収計画を策定し提示することで、前向きに検討してもらえる可能性があります。
各利益
損益計算書には以下の4つの利益があります。
- 売上総利益
- 営業利益
- 特別利益
- 純利益
それぞれのチェックポイントを説明していきます。
売上総利益(粗利)
売上高から売上原価を差し引いた金額が「売上総利益(粗利)」です。粗利が赤字だとそもそも事業として破綻している可能性があります。したがって粗利は黒字が前提です。
ここでは「売上総利益率(粗利率)」に注目しましょう。事業形態が変わらない限り、粗利率が大きく変動することは稀です。過年度と比べて粗利率が変動している場合はその理由を説明できるようにしておきましょう。
粗利の変動要因すら説明できないのでは「どんぶり勘定で経営している」とマイナスイメージを持たれたり、最悪の場合は在庫水増しによる粉飾を疑われる可能性があります。
営業利益
融資の際には最低でも営業利益が黒字であることが条件となります。営業利益は「本業の活動で稼いだ利益」であるため、経常利益と併せて最重要項目です。
慢性的な営業赤字の会社は経営改善計画書を提示しましょう。真っ当な経営改善策と認められれば前向きに検討してもらえる可能性があります。
経常利益
営業利益から、主に財務活動に関する収益・費用を足し引きしたものが経常利益です。受取利息や賃貸収入、支払利息、有価証券売却損益、為替差損益などがここに計上されます。
経常利益は本業の利益とは異なるものの、企業が経常的に行っている活動全体の収益を表します。ここが黒字であれば「返済能力がある」とみなされるため営業利益と同程度に重視されるポイントです。
当期純利益
経常利益に特別利益・特別損失を加減算した金額が当期純利益です。特別利益・特別損失は簡単に言えば「たまたま生じたもの」なので営業利益や経常利益ほどは重視されません。
例えば黒字にする目的で土地を売却し、特別利益を立てて黒字にしたとしても、その黒字は「たまたま」の要因によるものなのであまり評価されません。やはり大事なのは営業利益、経常利益ということになります。
簡易キャッシュフロー
損益計算書で利益が出ているからといって、キャッシュに余裕があるとは限りません。それは以下の理由によります。
- 損益計算書には、減価償却費などのキャッシュの流出が伴わない経費が計上される
- 損益計算書には、借入返済などのキャッシュの減少要因が計上されない
以上の要因から、損益計算書はキャッシュの増減を正確に表していないことが分かると思います。
金融機関は融資に際して「返済能力=キャッシュ」を最も重視しますが、損益計算書をただ眺めてもそれを読み取ることはできません。そこで、損益計算書から簡易キャッシュフローを求めます。
簡易キャッシュフローは「税引後当期純利益+減価償却費」または「(経常利益-法人税等)+減価償却費」として求めます。
簡易キャッシュフローは「利益から生み出したキャッシュ」を表します。金融機関はここから借入限度額の目安を割り出します。目安は「簡易キャッシュフロー×10」前後です。要返済借入金が簡易キャッシュフローの10倍を超えると要注意先となりますので注意が必要です。
無理やり利益を出すことの効果
少し語弊がありますが、以下のような方法で損益計算書の数字は簡単に操作することができます。
- 役員報酬の金額を著しく下げる
- 減価償却費を控えめに計上する
融資の際に有利に働くように、上記のような手法で無理やり黒字化を図ろうと考える方が少なからずいらっしゃいます。しかし結論から言えば、このような操作は無意味です。
金融機関はこのような利益操作を加味して「本来の利益」を算出します。したがって下手な小細工は意味がありません。もし赤字になってしまったら「来期以降の改善」に頭を切り替えるのが得策でしょう。
まとめ
金融機関は「決算書の利益をそのまま受け取っているわけではない」ということがご理解いただけたと思います。本記事の内容を参考に損益計算書について正しい認識を身に付けましょう。