融資で見られるポイント③ 債務超過

貸借対照表の純資産項目を常日頃意識している経営者の方は少ないかもしれません。しかし、融資を受けようとするのであれば純資産の内容は決して無視できません。融資で見られるポイントの第3回では純資産に関連する重要項目である「債務超過」について解説します。

債務超過とは?

債務超過とは、会社の総負債が総資産を上回ってしまっている状態を指します。つまり会社が保有する全ての資産を売却しても負債を返済しきれない状態です。

債務超過に陥る最大の原因は「経常的な赤字決算」です。過去の赤字や黒字は純資産の「利益剰余金」を増減させる要因となります。したがって赤字が続けば利益剰余金は減少し、最終的に純資産はマイナスに転じます。

また「投資の失敗」も債務超過の原因になり得ます。例えば借入等により資金調達を行い、新しい設備を導入したにも関わらず、思うように収益に結びつかなかった場合は債務超過に陥る可能性があります。

債務超過に陥ると「新規融資が困難」「取引先からの信用を損ねる」といったデメリットが生じます。様々な面でマイナスに作用するため決して喜ばしい状態とは言えません。

既に債務超過に陥っている場合

債務超過の状態に陥っていると新規の融資は非常に厳しいと言えます。だからと言って無条件で諦めるのではなく、以下の策を講じてみましょう。

増資やDESによる債務超過解消

増資によって資本金を増額することで債務超過から脱却を図るのも一つの手段です。社長の個人資金による出資はもちろん、個人所有の不動産や株式等の現物出資による方法も認められます。

また、DES(デット・エクイティ・スワップ)によって役員借入金を資本金に振り替える方法もあります。

社長個人による出資が難しい場合は第三者に出資を依頼することになります。この場合は持株比率に十分注意する必要があるでしょう。

経営改善計画を策定する

増資は即効性が高く手っ取り早い解決策ですが、長い目で見れば経営改善による債務超過脱却を図る方が得策です。

そもそも債務超過になった原因が経常的な赤字や投資の失敗といった「経営上の判断ミス」であるわけですから、経営方針自体をじっくり練り直すことで根本的な解決に繋がります。

なお、「債務超過だと新規融資は厳しい」と説明してきましたが、実は絶対に無理という訳ではありません。おおよそ3年以内に債務超過から脱却できる見込みであれば新規融資を受けられる可能性はあります。

そこで有効となるのが経営改善計画です。こじつけのような計画ではなく、「赤字要因の分析」「黒字化に向けた改善点」「増収に向けた取り組み」などを客観的目線で現実味のある内容で示しましょう。

経営改善計画が融資担当者に受け入れられ、近い将来債務超過から脱却する根拠として認められれば新規融資を受けられる可能性があります。

「実質的な債務超過」に注意

見た目上は債務超過に陥っていなくても、実質的に債務超過としてみなされることがあります。これは貸借対照表の資産の部に「実質的に価値のない資産」が計上されていることが原因です。価値のない資産の一例として、回収可能性が低い売掛金や貸付金、商品価値のない在庫などが挙げられます。

このような資産があると、金融機関はそれらの資産を資産の総額からマイナスします。その結果、決算書上は債務超過になっていなくても、実質的には債務超過であると判定されてしまいます。

審査のうえでは債務超過と同様に扱われてしまうため大幅なマイナスです。見た目上の数字だけでなく、貸借対照表の実態を把握しておくことも重要です。

まとめ

債務超過について簡単に解説しました。金融機関は一時の利益だけではなく、過去からの積み重ねで会社を評価します。既に債務超過に陥っている場合は顧問税理士や金融機関に相談するなどして早めの脱却を目指しましょう。