融資で見られるポイント② 貸借対照表
融資で見られるポイントの第2回は、融資審査の際、最重要とも言える貸借対照表について解説します。
なぜ貸借対照表が重視されるのか
例えば、直近期で大幅な利益を計上している会社の損益計算書の見栄えは大変良いものです。しかしそれ以前が赤字続きであった場合、依然倒産のリスクを抱えた会社である可能性もあります。
損益計算書が「点」であるとすれば、貸借対照表は「線」のイメージです。損益計算書と貸借対照表を両方参照して初めてその会社を正当に評価することができるのです。
貸借対照表で見られる5つのポイント
ここからは具体的に貸借対照表で見られるポイントを4つ解説していきます。
現預金の残高
企業の安全性や「返済できるか否か」を示す指標として「現金及び預金」の残高は重要です。では、どの程度の現預金残高を保有しておくべきなのでしょうか。
イメージとしては「突然売上が無くなったり、売掛金が回収不能となっても耐えられる程度の現預金残高」を保有していれば安全な企業であると見なされます。安全な現預金残高の考え方を2つ紹介します。
月商×〇ヶ月分
最も分かりやすいのが「月商×〇ヶ月分」の現預金残高があれば安全である、とする考え方です。「〇ヶ月分」とは、一般的に1ヶ月~3ヶ月分とされます。最低限、月商の1ヶ月分程度の現預金は保有しておきたいところです。
ただし、月商を基準にする考えは業種ごとの利益率の違いなど、実態を表していないという弱点があります。
運転資金
企業経営に経常的に生じる支払いである「運転資金」を目安に保有現預金を計算する考え方です。運転資金は以下の式で求めます。
(売掛金+受取手形+在庫)-(買掛金+支払手形)
急に収入が無くなったとしても、運転資金が支払えるだけの現預金残高があれば突然の破綻は防げます。そういった意味で根拠のある考え方です。
売掛金は健全か
長期未回収の売掛金があると審査の面でマイナスです。回収不能の売掛金が多発する会社は「取引先の属性が悪い」「回収に力を入れていない」などとマイナスイメージを持って見られます。回収率の低さは銀行にとっては不安材料に他なりません。
もし長期未回収の売掛金がある場合は、決して放置しているわけではなく、回収のための対策を講じていると説明する必要があります。
在庫が大幅に増加していないか
商品や製品などの棚卸資産が大幅に増加すると、以下のような疑念を持たれる可能性があります。
- 売却見込みの薄い不良在庫が溜まっている可能性
- 粉飾のために棚卸資産を水増しして計上している可能性
特に、売上が減少しているにもかかわらず棚卸資産が増加している場合は必ず理由を説明する必要があります。
無駄な資産が多く計上されていないか
金融機関は事業と直接的に関係ない資産が多く計上されている貸借対照表を嫌います。一例として、貸付金や仮払金、事業と無関係の固定資産等が挙げられます。これらを多額に計上していると「堅実な経営をしていないのでは?」「社長の私的な資産なのでは?」という疑念を持たれます。
特に多額の役員貸付金や仮払金が計上されている場合は融資はかなり厳しいと言えます。これらの科目には社長の私的な支出や使途不明金が集約されている場合が多いため「会社のお金を私的に持ち出している」と見なされ評価が大幅に下がります。
既に多額の役員貸付金が計上されている場合は「今後増えることはない」という点と「解消のために策を講じている」点などを審査の際に説明しましょう。
まとめ
貸借対照表を見れば、その会社の財政状態のみならず経営への向き合い方などが金融機関には手に取るように分かります。小細工でごまかそうとせず、日頃から金融機関を意識して経営することが貸借対照表改善の最善策です。