融資で見られるポイント⑤ 資金繰り表
融資審査の際には決算書だけでなく、資金繰り表も重要な役割を果たします。融資で見られるポイントの第5回はそんな「資金繰り表」について解説します。
資金繰り表とは?
資金繰り表とは、会社の資金の動きを記録・予測する表です。過去の実績値を元に、将来の予測値による資金繰り表を作成するのが通常です。作成単位は「日次」「週次」など会社によりけりですが、月次の資金繰り表が最も一般的です。
資金繰り表は決算書とは違い、すべて「入出金」の事実を元に作成します。したがって誤魔化しが効かず、会社のキャッシュの動きが容易に把握できるという特長があります。
なぜ金融機関は資金繰り表を重視するのか
損益計算書で利益が生じていたとしても、キャッシュが潤沢であるとは限りません。例えば利益が1,000万円出ていたとしても、借入返済が2,000万円あればキャッシュは減少します。その他、売掛金が回収できない場合なども同様です。利益が出ていてもキャッシュ不足に陥ることは珍しくないのです。
金融機関は返済できるかどうかを最重視しますので、キャッシュの動きを把握したいと考えます。そこで有効となるのが資金繰り表です。資金繰り表からは以下の情報を読み取ることができます。
- 返済能力があるかどうか
- いつ、いくら資金が不足するのか
- 融資をしたことによって資金繰りがどのように改善するのか
資金繰り表からは返済能力のみならず、申込金額の妥当性や融資による経営改善の効果まで把握することができます。以上の理由から金融機関は資金繰り表を非常に重視しています。
資金繰り表を作成している会社は評価アップ
どの会社も必ず作成している決算書とは違い、資金繰り表は作成していない会社も多いのが実態です。しかし「資金繰り表を作成していない会社は信用できない」というのが金融機関の本音です。特に、定期的に融資が必要となる会社は資金繰り表の作成は必須と考えてもいいでしょう。
そもそも資金繰り表を「融資のために必要だから」と渋々作成するのはもったいないと言えます。キャッシュの動きを把握し、予測を立て、資金不足に陥る時期をあらかじめ予見し、予測と実績との差異を分析することで経営改善にも役立てられます。
このように細かい数字を把握している経営者は、間違いなく金融機関から評価されます。資金繰り表は様々なメリットがありますので、現在資金繰り表を作成していないという方はぜひ検討してみてください。
資金繰り表の作成方法
資金繰り表には決まったフォーマットはありませんが、会社の全ての入出金を漏れなく記入する必要があります。項目の並び順としては、まず最上部に現預金の前月繰越額、最下部に翌月繰り越しの現預金残高を表示します。その間の項目は損益計算書と同じく上から「売上入金」「売上原価支出」「販管費支出」「営業外収支」「特別収支」などとするのが分かりやすいでしょう。
また、上記に加えて「損益計算書には表示されないが、支出が生じるもの」の項目も作成します。代表的なものとして借入金やローンの返済、税金類の支払い、資産計上している保険料などです。これらを記入する項目として「税金支出」「財務・投資収支」などの項目を作成すると良いでしょう。
では次から具体的な作成手順の一例を解説していきます。
期首からの実績資金繰り表を作成する
例として3月決算の会社が、8月の時点で資金繰り表の作成を始めると仮定します。まずは期首である4月~7月までの実績値による資金繰り表を作成します。
通帳や現金出納帳を元に、入出金を漏れなく記入します。漏れがあれば資金繰り表の現預金残高と、帳簿や残高試算表の現預金残高にずれが生じるため、確認しながら作成しましょう。
通期予測資金繰り表を作成する
期首からの実績資金繰り表で作成した実績値を元に、8月~3月までの予測値を作成します。季節要因が少ない業種では単純に実績値の平均でも良いですが、ある程度月次売上の予測が立つ場合はなるべく細かく予測を作成しましょう。
予測値で注意すべき点は、既に決まっている高額な支払いを忘れずに記入することです。例えば年払いの共済や保険料、税金の中間納付などは支払いの時期、金額が判明しているはずです。賞与も大雑把には支出額が分かると思います。
このような大きな出費が予測値から漏れていると予測の意味がありませんし、想定外の資金不足に陥る可能性があります。漏れがないよう注意深く作成しましょう。
適宜予測値を修正する
融資の際には通期予測資金繰り表の予測値を記入した資金繰り表を提出する形になります。しかしそこで提出して終わりではもったいないです。予測値に対する実績値を定期的に記録し、予測と実績の差異を把握しましょう。
資金繰り表は資金不足に陥る原因や、融資が必要となる時期の把握に役立ちます。資金が足りなくなってから慌てて融資を申し込むよりも心の余裕が生まれますので、ぜひ資金繰り表を作成する習慣を付けてください。
まとめ
資金繰り表について解説してきました。対金融機関への提出書類としてはもちろん、会社経営の要である現預金を管理する書類として資金繰り表は非常に有効です。まだ作成したことがない方は、これを機会に作成してみることをおすすめします。