融資で見られるポイント⑥ 指標編

金融機関は融資の際に、決算書から読み取れる様々な指標によって企業を評価します。
融資で見られるポイントの第6回では、金融機関が重視する指標のうち、主に企業の安全性を表す「指標」について解説します。

安全性を表す指標とは

金融機関は融資の際に「収益性」「成長性」「安全性」など様々な視点で企業を評価します。その中でも財務健全性や返済力に繋がる安全性の指標は重要性が高いと言えます。

安全性を表す代表的な指標として、以下のものが挙げられます。

  • 流動比率
  • 自己資本比率
  • ギアリング比率
  • 固定長期適合率

上記に加えて、返済能力を表す代表的な指標である「債務償還年数」についても併せて解説します。

流動比率

流動比率とは、流動負債に対する流動資産の割合を表す指標です。流動比率は企業の短期的な安全性を測る指標で、流動比率が高ければ高いほど金融機関の評価は高くなります。

流動比率は以下の式で計算します。

流動資産÷流動負債

流動比率の意味をもう少し詳しく説明すると、「1年以内に返済の必要がある負債」である流動負債を、「1年以内に現金化する資産」である流動資産でどれだけカバーできるかを数値化したものです。

つまり流動比率が100%を切っている状態は「1年以内に資金がショートする可能性がある」というリスクを孕んでいます。したがって流動比率は100%を上回ることが最低限の目標です。流動比率が150%程度あれば金融機関の評価は問題ないと考えて良いでしょう。

流動比率の改善策としては、短期借入をできるだけ長期借入に切り替えていく方法や、不要な固定資産を売却し現金化する方法などが考えられます。

自己資本比率

自己資本比率とは、会社の総資本(負債+純資産)のうちに自己資本(純資産)が占める割合を表す指標です。

ここで、自己資本と他人資本について簡単に説明します。自己資本は株主からの出資や会社がこれまで積み上げてきた利益などから構成される、返済の必要がない資本です。一方他人資本とは、金融機関からの借入金や取引先に対する買掛金など、いわゆる外部から調達した資本です。

「自己資本比率が高い」ということは、返済の必要がない資本の割合が多いことを指します。つまり財務健全性が高い企業と見なされ、金融機関からの評価も高くなります。

自己資本比率は以下の式で計算します。

自己資本(純資産)÷総資本(負債+純資産)

自己資本比率の目標値は業種によっても異なりますが、自己資本比率が20%を切ると危険水準とする見方もあります。自己資本比率が低い会社はひとまず20%を目標にすると良いでしょう。

自己資本比率の改善策は、毎期安定して利益を上げることが最善です。手っ取り早く改善したい場合は増資やDES等の手段が考えられます。

ギアリング比率

ギアリング比率とは、自己資本に対する有利子負債の割合を表す指標です。返済の必要がない自己資本に対してどれくらいの借入金を有しているかを示し、低ければ低いほど安全性が高いとされます。

ギアリング比率の計算式は以下の通りです。

有利子負債÷自己資本

ギアリング比率はレバレッジ比率とも言われます。自己資本を上回る借入金を運用している場合、ギアリング比率は悪化しますが、レバレッジ効果で効率的な成長を達成できる可能性もあります。

そういった面では必ずしもマイナスとは言えませんが、こと指標の観点ではリスクを抱えている状態であると言えます。目安として、ギアリング比率が150%以内であれば金融機関の評価は問題ないと言えるでしょう。

固定長期適合率

固定長期適合率とは、自己資本+固定負債(主に長期借入金)のうちに固定資産が占める割合をいいます。計算式は次の通りです。

固定資産÷(自己資本+固定負債)

投下資金の回収に時間がかかる固定資産は、返済期間に余裕のある長期借入金と、返済の必要がない自己資本でまかなわれているのが理想です。したがって固定長期適合率は100%を切っていることが望ましいと言えます。

固定長期適合率が100%を超えてしまっている場合、固定資産を売却し、アウトソーシングやリースなどによって固定資産のスリム化を図ることで改善することができます。また、短期借入を長期に切り替えたり、新規の長期借入を得ることによっても改善が見込めます。

債務償還年数

借入金残高がその会社の規模や業績に見合っているかどうかを示す指標に「債務償還年数」があります。債務償還年数は以下の式により計算します。

(融資残高-所要運転資金)÷(税引き後利益+減価償却費)
※所要運転資金は「売上債権+棚卸資産-買入債務」で算出します

上記の式のうち「融資残高-所要運転資金」の部分は「返済しなければならない融資残高」を表します。運転資金に要している借入金は、売掛金の回収によって返済し、次の仕入の際に再度新規で借入することを想定しています。要するに運転資金に要する借入金は常に必要となる資金であると考え、債務償還年数の計算上は融資残高から除かれます。

また「税引き後利益+減価償却費」の部分は「簡易キャッシュフロー」と言われるもので、本業から得たキャッシュを表します。

要するに債務償還年数とは、本業で得たキャッシュで借入金を返済するのに何年かかるのかを表しています。

上記の式で計算した債務償還年数が7年以内であれば理想的ですが、10年以内であれば問題ないと判断されます。

まとめ

融資の際に重視される代表的な指標について解説しました。それぞれの指標の目安に届いていない場合、どうしたら改善できるのかを検討しましょう。

経営がうまくいくことと、指標が良いことは必ずしもイコールではありません。しかし、指標が良ければ金融機関から高い評価を得られるのは事実です。金融機関と上手く付き合っていくためにも指標を意識してみることをおすすめします。