融資で見られるポイント⑦ その他

融資審査の際には決算書の内容ばかり気にしてしまいがちですが、それ以外にも金融機関がチェックしているポイントは多々あります。融資で見られるポイントの第7回では決算書以外の注意点について解説します。

社長個人の信用情報

個人事業主のみならず、法人の融資審査でも社長・役員の個人信用情報がチェックされます。過去に個人で利用したクレジットカードや住宅ローン、自動車ローンなどを滞納した経験がある場合、役員を務めている法人の融資審査に影響を及ぼす可能性があります。

個人の信用情報はCICやJICCといった機関が保有しています。気になる方は自分の信用情報を開示請求してみましょう。

社長の人柄

金融機関からの融資も、突き詰めれば信頼関係で成り立っています。数字による信頼はもちろん重要ですが、人柄も必ず見られていると考えてください。例えば「発言が信用できない」「高圧的」などと性格にマイナスイメージを持たれると審査には不利に作用します。

また、極度に楽観的な性格も考えものです。「売上〇億達成します」「全国展開の予定です」などと耳障りのいい発言をしておいて、肝心の事業計画や数字について尋ねるとあいまいな返事しかできない社長は意外と多いものです。金融機関は社長の希望的観測ではなく、根拠に基づいた事業計画を評価します。悪気はなくても「地に足がついていない」とマイナスの印象を与える恐れもあります。

社長の経歴や能力

起業して年度が浅い企業の場合、社長の過去の経歴が現在の事業にどう生かせるのかといった点も評価対象となります。例えば「前職は一流レストランの料理長、料理の腕はもちろんのこと、部下のマネジメントやコスト管理も任されていた」という経歴を経ての飲食店開業となればもちろん好印象でしょう。

未経験の業界で開業した社長でも、その業界の動向や同業他社のリサーチなど入念に下準備をしているという印象を与えることができれば評価されるはずです。つまり、勢いや根拠のない自信ではなく、成功の裏付けがあるかどうかという部分が重要です。

税金や社会保険料の未払い

融資の際には納税証明書の提示を求められます。したがって税金を滞納しているとその時点でかなり融資は厳しくなると考えてください。

ただし、滞納があっても税務署との間で分割支払いの協議が成立している場合は許容される場合もあります。税金の支払いが厳しい場合は早めに税務署に相談に行きましょう。

社会保険料の納付書の提示を求められることは稀ですが、決算書に多額の未払金が計上されていたり、該当の内訳書を見れば滞納があることがばれる可能性は高いです。

本業に関する資金繰りだけでなく、常日頃から税金や社会保険料の支払いも考慮して資金繰り計画を立てることが大切です。

担保や保証人

金融機関は貸倒れのリスクを回避するため、担保や保証人を求めることが一般的です。

担保に設定されるのは換金価値がある資産です。最もポピュラーな担保は不動産ですが、不動産を保有していない場合や既に抵当権が設定されている場合は、有価証券、商品、売掛金などを担保として差し入れることもあります。

保証人については代表取締役や関係会社などが保証人となることが多いでしょう。代表者が法人の融資の連帯保証人となることを「経営者保証」と言います。

この経営者保障は企業融資において広く利用されていましたが、会社が倒産するとその借金が経営者個人に圧し掛かることが問題視されていました。このような流れもあり2023年4月に「経営者保障のガイドライン」が公表され、見直しを行う動きが出てきています。

事業計画書

事業計画書は企業の成長への道筋や経営の改善策を示す資料です。創業時融資の際には必須資料ですが、そうでない場合でも事業計画書を提示することはプラスに作用します。

事業計画書を活用することで、事業の概要や問題点、今後の増収計画など、融資担当者が気にしている点を漏れなく伝えることができます。口頭での説明と比べて、根拠に基づいた数値計画を示すことで説得力を持たせることができます。

ただし、事業計画書を適当に作成したのでは意味がありません。根拠の薄い、過度に楽観的な事業計画を持ち出すとかえってマイナスの印象を与える可能性もあります。現実的で客観的視点に基づいた事業計画書を作成することを心がけましょう。

節税と融資の関係

経営者の方の本音を言えば「できるだけ節税して、必要があれば融資も受けたい」ということになると思います。しかし節税と融資は相反するということを理解する必要があります。

一般的に節税を果たすためには、会社の利益を圧縮する必要があります。適正な方法で税負担を軽減することはメリットもありますし、節税が悪いとは言いません。

しかし、節税ばかりに気を取られて利益を過度に減らしたり、無駄な支出を増やすと金融機関から評価されにくい決算書が出来上がります。これではいざというときに融資が受けられない可能性があります。

「資金には余裕があるから大丈夫」と思っていても、いつどんな悪材料に遭遇するか分からないのが経営です。いざという時にスムーズに融資を受けられるよう備えておくことはリスクヘッジとして重要なことです。節税ばかりを考えるのではなく、金融機関の評価も見据えて決算に臨みましょう。

まとめ

融資審査では数字が重視されるのはもちろんですが、数字に表れない評価点も存在します。金融機関と良い付き合いを継続することは、そのまま安定した経営に繋がります。利益を出すことももちろん大切ですが、本記事で触れた点についても少し意識してみてください。