融資で見られるポイント① 資金使途
今回から融資で見られるポイントと題して、何回かにわけて融資審査について解説したいと思います。
第1回目の今回は「資金使途」についてです。融資審査の際に明確に説明する必要がある資金使途についての注意点を中心に解説します。
明確な資金使途を示す
融資の際は「何に使うのか」「いくら必要なのか」を明確に示す必要があります。考えてみれば当然の話で、あなたがお金を貸す立場なら「何にいくら必要なのか」すら説明できない人にお金を貸したいとは思えないはずです。
一般的な資金使途として、大きく「設備投資」と「運転資金」に分けられます。
設備投資
設備投資は「新規店舗や工場の開設資金」「機械や備品等の購入資金」等に要する資金を指します。程度の差はあれど会社の規模と比較して高額な融資が必要となるケースが多いでしょう。したがって「設備投資の効果で増収増益が果たせる」という計画を根拠を持って説明する必要があります。
しかし最も重要なのは明確な資金使途と金額の妥当性です。融資担当者が「本当にそんなに高額な投資が必要なのか」と疑ってしまうような説明では不十分です。
設備投資の場合は前もって業者に見積書を発行してもらってから融資に臨むのが一般的です。「事業拡大のためにはこの設備投資が必須であり、その結果いくら必要である」と自信をもって説明できるよう準備しましょう。
運転資金
運転資金は「日常的な事業経営に必要な資金」を指します。設備投資に比べると金額も少なく、借入期間も短期であることが一般的です。
運転資金不足は通常、掛取引による入金・支払いサイクルのズレによって生じるものです。簡単に言えば「売掛金が入金されるまでの資金の補填」というようなイメージです。
運転資金の説明方法
会社の営業成績が好調であれば「掛取引の影響による一時的な資金不足の補填」と説明すれば基本的には問題ありません。しかし売上や利益が不調であることが原因の場合はやや説明が難しくなります。
その場合、単に「売上が下がって固定費が払えない」といったマイナスな理由だけを説明するのはNGです。それが事実だとしても、銀行は衰退していく会社に融資したいなどと思うはずがありません。
こういった場合には以下のような対策を講じることが必要となります。
- 売上・利益の減少要因を分析する
- 業績回復に至るまでの経営改善計画を策定する
経営計画は見栄えのいいものを作成すればいいというわけではなく、第三者が見ても実現可能性の高い計画を策定する必要があります。このプロセスが銀行の信用度を高めるとともに、会社の経営にもプラスに作用します。
運転資金の計算方法
運転資金としていくら必要なのか、妥当な金額を簡単に計算するためには以下の計算式を使用します。
(売掛金+受取手形+在庫)-(買掛金+支払手形)=運転資金
上記の式のうち「売掛金+受取手形+在庫」は「近い将来キャッシュになるもの」と説明できます。一方「買掛金+支払手形」は「近い将来キャッシュを減少させる要因」です。
一般的な業種では先に仕入れを行い、その後に売上が立ちます。この収支のサイクルのズレによる一時的な資金不足が運転資金という訳です。
資金使途違反はNG
融資の際に説明した資金使途と違う目的に使った場合、資金使途違反として銀行の信頼を著しく損ねます。今後の付き合いができなくなる可能性があるため資金使途違反は絶対にNGです。
よくあるのが以下のようなケースです。
- 設備投資として500万円借り入れたが、値引きにより支払総額が400万円で済んだ
- 運転資金として借り入れたが別の借入の返済に回した
- 運転資金として借り入れたが社長のプライベートな支出に使用した
設備投資にかかった資金が当初の見積りより少なく済んだ場合は、必ず銀行に報告しなければなりません。社長のプライベートな支出に回すのはもってのほかです。「バレないのでは?」と思うかもしれませんが、役員貸付金や役員借入金の増減を見れば簡単にバレてしまいます。
まとめ
資金使途は融資審査の入口となる部分です。ここが不明瞭では審査に不利な影響が生じますので、本記事を参考に「何にいくら必要か」を明確に説明できるように準備しておきましょう。