個人と法人の違い⑧ 出張手当

出張手当は節税手法として非常にポピュラーです。しかし、個人事業主と法人では出張に関する経費の取り扱いが異なります。個人と法人の違い 第8回ではそんな出張に関する経費について解説します。

出張手当の個人事業主と法人の違い

出張に関する経費のうち、個人事業主と法人で最も異なる点が「出張手当」です。出張手当は出張の際に会社から支給される金額で、出張旅費規程のルール通りに一定の金額が支払われます。

出張手当は代表者や従業員個人に対して支給する金額であるため給与と性質が近いのですが、節税に優れている点は「所得税や社会保険の課税対象にならない」という点です。また、詳細は後述しますが消費税の計算上、仕入税額控除が適用できます。

出張手当に関する個人と法人の違いですが、個人事業主は事業主本人に出張手当を支給することができません。一方法人の場合、代表者に対して出張手当を支給することができます。ここが最も大きな違いです。なお、個人事業主でも従業員に対して出張手当を支給することは可能です。

頻繁に出張が発生する事業主の方は、法人成りした方が節税面で有利な可能性が高いでしょう。所得税も社会保険もかからない収入を得られ、会社の経費にもなり、消費税の負担も軽減できるとなればその影響はかなり大きいと言えます。

出張手当と出張旅費の違い

出張手当の具体的な解説に入る前に、立替出張旅費(出張経費)との違いについて簡単に触れておきます。

  • 出張手当…出張旅費規程に従って、代表者や従業員個人に対して一定の金額を支給
  • 立替出張旅費…出張の際にかかった交通費や宿泊費、飲食費等を実費精算

立替出張旅費は出張の際にかかった費用を実費精算する方法です。経費計上できる額はあくまで実際に支出した金額です。

一方出張手当は実際に支出した経費とは無関係に、出張旅費規程に定めてある金額をそのまま代表者や従業員に支給します。経費計上できる金額は支給した出張手当の金額となります。

出張旅費規定とは

出張旅費規程とは、簡単に言えば出張の定義や出張手当の金額について定めた社内ルールです。あくまで社内ルールであるため、どこかに提出する必要はありません。

ただし、税務調査の際には出張手当の妥当性を確認するためほぼ確実にチェックされますので、内容はしっかり吟味する必要があります。

出張旅費規程に記載する内容は多岐に渡りますが、参考として以下の中小機構の記事を参考にしてみてください。
中小機構 https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list8/8-1-16.html

一番難しいのが出張手当の金額ですが、これは次章で解説します。

出張手当の決め方や相場とは?

まず前提事項として、出張手当の支給対象を全社員とする必要があります。「社長だけ」「役員だけ」といった規定は認められません。出張手当の金額を役職別に差を付けるのは問題ありませんが、あまりに乖離が大きいのは問題です。給与等の金額などを基準にバランス良く規定する必要があります。

出張手当は「日当」と「宿泊料」の金額を別々に規定するケースと、全部まとめて日当として金額を規定するケースがあります。どちらかと言えば日当と宿泊費を別々に規定する方が一般的です。

日当・宿泊料は役職ごとに差を付けるのがやはり一般的です。社長の日当・宿泊料は平社員の1.5倍~2倍程度に設定している会社が多いと言えます。

また、海外出張が生じる会社は、海外出張と国内出張で日当・宿泊料に差を付けるケースが多いでしょう。その他「日帰りか宿泊か」などの要因によっても差を付けるケースもあります。この辺りは会社によって異なります。

肝心の金額ですが、出張旅費規程はあくまで社内規定です。したがって金額は自由に設定できるのですが、あまりに高額な出張手当を設定するのはNGです。とは言え、いくらから「あまりに高額」になるかといった明確な基準があるわけではありません。この辺りが出張手当の悩ましいところです。

例えば「出張手当 相場」などと検索すれば、日当や宿泊費の相場を示しているサイトが出てきます。これらを参考に決定するのも良いでしょう。また、「日当・宿泊料の上限は1日25,000円前後」という目安も存在します。これは「国家公務員等の旅費に関する法律」において日当・宿泊費の合計を最高26,700円と規定していることが根拠です。

相場より高額な出張手当を規定する場合、その金額の妥当性の根拠をしっかり示す必要があります。極端な例ですが、役員報酬1億円の社長であれば、相場より高額の日当を設定していても自然であると考えられます。

それでも否認される可能性はありますが、逆に言えばその出張手当が「不相当に高額である」と税務署が証明するのも困難が伴います。いずれにしても否認されるリスクは頭に入れておきましょう。

出張手当は消費税上も有利

出張手当を支払うと、その出張手当に係る消費税額は仕入税額控除の対象となります。出張手当は給与と似た性質の経費であるにもかかわらず、その支払いが多ければ多いほど消費税が安くなるというのはかなりお得感があります。

気になるのは令和5年10月1日からスタートするインボイス制度です。インボイス制度下では、支払った経費を控除するためにはインボイスの保存が必須とされています。

ただし、このルールは出張手当には適用されません。出張手当についてはインボイスの保存は不要とされ、その代わりに以下の事項を帳簿に記載する必要があります。

  • 出張手当を支払った相手の氏名
  • 出張の内容
  • 支払った出張手当の金額
  • 出張旅費特例である旨

例えば仙台に日帰り出張した山田太郎さんに3,000円の日当を支給した場合、帳簿の摘要欄に「山田太郎 仙台日帰り出張旅費 出張旅費特例」のような形で記載することになります。

個人事業主の出張旅費

個人事業主が経費にできる出張旅費は「事業のための出張に要した費用」のみです。営業や視察目的の出張に関する費用は全て経費計上が認められます。

注意点として、プライベートな旅行と事業としての出張を明確に区分する必要があります。例えば出張ついでに観光するなどした場合、仕事に費やした時間の割合を記録し、その割合に応じて経費計上することになります。

海外出張など高額な出張旅費を計上する場合、出張レポートのような証拠書類を作成しておくと良いでしょう。「日程」「事業割合」「仕事内容・行程・成果」などを記録しておき、税務調査に備えておくと安心です。

まとめ

出張手当について、個人事業主と法人の違いを解説しました。代表者に対する出張手当が経費にできるという点では法人の方が節税面で有利です。ただし、出張旅費規程を作成しておく必要がありますので、規定の内容に迷ったら税理士に相談しましょう。